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好きなモノを食べれない妻のために食事と母乳について調べた

きっかけは母乳について義母の一言

妻は母乳の量が少ないことを悩んでいたし、心配している。幸いうちの子の成長はちゃんと1日生後2ヶ月だけど約30グラムくらい増えているので母乳は足りていると僕自身は思っていて、何度も進言しているがお腹がすくから赤ちゃんは泣くから、お腹がすく以外でもあかちゃんは泣くの発想まではすごく時間がかかった。しかし、今でも納豆は食べない、チーズは食べないなど食事制限をお母乳のために行っている。これ?科学的根拠あるの?もしかして無駄にストレスかけているだけじゃない?そう思って色々と調べましたので、食事と母乳の関係に疑問があるママさんと知識を共有したいと思います。

母乳の品質はそこまで食事の影響を受けません

粉ミルクなどの代替品が発明される以前は、ほとんどすべてのママさんが自分の母乳で赤ちゃんを育ててきました。人類の長い歴史のなかでは,食料がいつも豊富であったわけではありませんが、そのような時でもママさんは赤ちゃんに母乳を与え続けることができていることは歴史が証明しています。このことからも、母乳を構成する栄養素のなかでとくに赤ちゃんの成長に必要不可欠なものは、ママさんの食事に大きく左右されることはなく、ある程度は一定に保たれる仕組みになっています。

 

必要な栄養素ももちろんあります。

しかし、ママさんが食事にまったく気を使わなくてよいかというと、そうではありません。つわりなどが酷くて妊娠中に十分に食事の摂取ができていなくて、出産後も不足が続いた場合には、栄養素によっては母乳中の量が低下してしまうものもあります。

ママさんの回復のための栄養も大切です。

もう一つ大事なことは、授乳期は赤ちゃんに必要な栄養を与えるだけではなく、出産にともなう変化から次第にママさんの体が回復していく過程にあるということです。帝王切開術により出産した方や、出産時の出血量が多かった方では、貧血気味なことが多いので十分な鉄の摂取が必要です。身体活動量の程度にかかわらず,授乳中の女性は1日当たり350kcal多くとることが推奨されています。

「よい」母乳のための食事のバランスとは?

食事のバランスといっても、人によってそのイメージは異なると思います。病気などによって特定の食品を避けなければならない状況の人を除けば,厳密には授乳中だからといって避けなければならない食品はないといって問題ありません。2006年に厚生労働省から発表された「妊産婦のための食生活指針」では,「妊産婦のための食事バランスガイド」を示しています。この内容は,「日本人のための食事摂取基準2010年版」の発表前に示されたものではありますが,その後の検討でとくに見直しの必要は示されていないので,ぜひ活用いただきたいと思います。

母乳栄養のためにはどんな食事が理想的なのでしょうか?

母乳には、食事以外にも多くのものが影響を与えています。食事だけで母乳中の栄養素量や母乳の分泌量を調節することはきわめてむずかしいと考えられています。もし、お母さんの食事によって母乳中の栄養素量が大きく変動し、場合によっては赤ちゃんに与えるのに適さない成分となってしまうのであれば、世界保健機関(WHO)が加盟国すべてに対して母乳栄養を推奨することに整合性がないということになってしまいます。(アフリカなど途上国でもきちんと母乳栄養で赤ちゃんは育っていますよね?)

食事はやっぱりバランスが大切

これさえとっていれば理想的な母乳栄養ができるという食品はあるのでしょうか?残念ですが,授乳中以外のときとおなじでそのような食品はありません。普段から、特定の食品だけに偏るのではなくさまざまな食品からバランスよくとるのが一番です。先ほど紹介させて頂いた「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にママさんの食事を振り返っていただき,足りないものや過剰なものを確認してみるのはいかがでしょうか?毎日欠かさずこのバランスガイドを満たさなければ即座に問題が生じるというものではなく,1か月くらいのスパンで平均的にとれていれば理想的といえるでしょう。普段の生活でも,食事の内容は日によって変動があるのが当たり前ですので,神経質になりすぎずにバランスを心がけたいものです。

乳腺炎予防に食べて良いいいもの避けた方が良いもの。

特定の食品を摂取しないことで母乳の分泌量が増えることや、乳腺炎などのトラブルを予防できると信じて色々な食品を買うママさんはたくさんいます。実際、2009年度に産後1か月の女性37名を対象に調査を行われた調査で「とらないようにしている食品がある」と回答されたママさんは54%で、このうち半数の方がその理由を「母乳のため」としていました。

避けている具体的な食品を挙げた方は20名で、そのうち「油分の多いもの」と回答された方が多くみられました。しかし、脂質の摂取量や牛乳・乳製品の摂取などが本当に母乳栄養の妨げになるかというと,十分な科学的根拠はないようです。福祉で有名なスウェーデンでは産後3か月時点の母乳栄養率は90%ととても高いです。ママさんの1日当たりの脂肪摂取量をみると15~74歳の女性で729と日本の成人女性(20歳以上)の48.49に比べるとずいぶん高いのです。また、乳類の摂取量に関しても、スウェーデン女性の摂取量は1日平均311gであったのに対して、日本の成人女性では96.6gです。人種間の違いはあると思いますが、日本とスウェーデン乳腺炎罹患率には差はほとんどありませんので問題ないと考えて良いと思われます。

乳腺炎などの乳房トラブルと食生活との関連を裏付ける研究も乏しいです。米国で946名の産後女性を3か月間観察した研究では、この間に乳腺炎を発症した人は9.5%ででした。もっとも発症頻度が高かったのが産後3週以内で,その後は低下していました。オーストラリアでの同様の調査では発症率は17%で,半数が産後4週以内の発症でした。このデータが示しているのは、産後の早い時期に乳腺炎の発症は集中しているということです。つまり、ママさんの食事内容よりも母子ともども授乳に慣れていないことが原因と考えられます。また、どちらの調査でも乳頭亀裂と乳腺炎の発症に有意な関連がみられており,細菌感染が乳腺炎の引き金となっていることを強く疑わせる結果といえるでしょう。

昔のお母さんたちは野菜中心の和食だけで母乳を与えていたのだから,そのほうがふさわしいのでは?

昔のお母さんたちは多くの場合,野菜以外の食べ物を手に入れることがむずかしかったので,野菜中心の和食だったのではないでしょうか。海や川の近くに住んでいて,容易に魚介類をとりいれる環境にあった方々は,通常の食事でこれらをとっていたと考えられます。和食ではないですが,菜食主義の方で肉や魚,乳製品,卵などをとらない食事を続けている場合があります。海外の話になりますが,菜食主義のママさんがビタミンB12の供給源である動物性食品を長期にわたってとらずに欠乏状態である場合には,母乳中のビタミンB12が不足し,赤ちゃんの欠乏症や場合によっては神経障害を引き起こすことが報告されています。

海苔などの海藻類には比較的多くのビタミンB12が含まれていますが、うまく植物由来のビタミンB12は体内でうまく活用できません。動物性食品をとってはならない場合を除いては,適度にとることがむしろ赤ちゃんの健康のためになることでしょう。

 

ビタミンD不足は気をつけましょう

動物性食品を長期間とらないことで不足のおそれがある栄養素にビタミンDがあります。ビタミンDは魚類や卵の黄身などに比較的多く含まれています。ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でも作られますが、最近はサンスクリーン剤を利用する人も多いので,不足になりがちです。また、授乳中のママさんは部屋に閉じこもりがちになります。あかちゃんが寝ているとき1日数分でも外に出て日光浴をされるとビタミンDだけでなく、産後うつの予防にもなりますのでオススメです。

コーヒーやカレーなどの刺激物は母乳に悪いのでは?

コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインが母乳中に移行して、赤ちゃんに影響を与えることを心配する方は多くいます。意外に思われるかもしれませんが,授乳婦5名にカフェイン150mgを摂取させて,母乳中と血中のカフェイン濃度を測定した研究では,両者ともに摂取後1時間がピークでしたが,母乳中のカフェイン量は血中濃度の約半分だったとのことです。日本標準食品成分表によれば,コーヒー100g当たりのカフェイン量は60mgなので、1日に1~2杯程度のコーヒー摂取では、赤ちゃんへの影響は心配するほどではなさそうです。

カレーやトウガラシなどの香辛料を心配する方も多くいます。しかし、地域によってはからいものを日常的に摂取している国々もありますが,多くの子どもたちは問題なく育っています。また授乳中の女性にニンニクを摂取させ,母乳の匂いの変化や赤ちゃんの哺乳状況を調べた研究では、母乳のニンニク臭にもかかわらず哺乳量は変わらなかったとのことです。あまり神経質になりすぎず,たまには刺激のある食品を楽しんではいかがでしょうか。

最後に

授乳中であるかどうかにかかわらず、食事は健康の維持に大切であると同時に、楽しみの一つです。授乳中だからといって、これまで慣れ親しんだ食生活を一変させつらい努力をしなければならないわけではありません。今までの食生活の足りなかった部分や過剰だった部分に気づき,一歩ずつ理想に近づければよいのではないでしょうか。また,時にはお菓子が食べたくなるでしょう。一日の食事の大半がお菓子では偏ってしまいますが,少し楽しむことは,とくに問題はないでしょう。

母乳が赤ちゃんの健康にとって万能であるかのようにみなしてしまうと、その万能なものを作り出すための法外な努力をしなければならないと思いこんでしまいがちです。しかし、母乳が万能であったなら、母乳栄養率がほぼ100%であった1900年の乳児死亡率(出生した赤ちゃん千人に対して1歳未満で亡くなった赤ちゃんの割合)が155と,2008年の2.6に比べて60倍近く高かったことに対して説明ができません。

衛生的な育児環境や医療の発展などもあって、赤ちゃんが早くに亡くなってしまうリスクの低い、世界でも有数の国となったのです。特定の食品を万能齢したり、危険視したりするような情報にとらわれずに、授乳期の食生活を楽しむことこそが、お母さんと赤ちゃんの健康には一番ではないでしょうか。

 

参考文献

母親の食生活と母乳のにおい
滋賀県立大学人間文化学部生活栄養学科 廣瀬 潤子

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