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粉ミルクの進化の歴史を紐解いてみる

母乳について

粉ミルクの進化の歴史を紐解いてみる

母乳は乳児にとって最良の栄養であり、乳児の健やかな成長や発達にとって必要なすべての成分が含まれています。

母親と乳児にとって母乳栄養が最優先されることはいうまでもありませんが、一方粉ミルクは様々な理由で母乳哺育ができない乳児にとって母乳代替食品として発育に寄与しています。従って、粉ミルクには母乳の成分組成や機能について詳細に調査を研究し、製品開発へつなげていくことが母親や乳児にとって安心して使用できるミルクになると考えられます。

今回は、粉ミルクの過去、現在、将来について研究開発を中心に考え方や取り組みをご紹介させていただきます!

国内の粉ミルクの歴史

日本初の粉ミルクが大正16年に発表されました。昭和26年には「調製粉乳」の規格が改正され、その組成は全粉乳を70%と添加糖質30%、さらにビタミン類や鉄を添加した粉ミルクが発売されました。

昭和54年には「調製粉乳」と「特殊調製粉乳」の規格が統一し、新たな「調製粉乳」規格とされ粉ミルクは「特殊栄養食品」の表示許可対象食品となりました。この時期には、亜鉛や銅の添加、タウリンオリゴ糖ラクトフェリンなどが配合されました。

また、昭和63年以降には、顆粒化による溶解性の向上や機能性成分のDHAやβ‐カロテンの配合、たんぱく質の予備消化などが図られ現在に至っています。

母乳栄養と人工栄養の現状と将来

母乳と人工乳による発育状態は現状ほとんど差異は認められませんが、免疫やアレルギー便性状などの面では未だ大きな差異があります。とくにアレルギーの面では、粉ミルクのたんぱく質が異種タンパク質としてアレルゲンとなり得る可能性があります。

そこで粉ミルクによるアレルギー発症への対応策として牛乳タンパク質の低分子化、消化管機能の発達促進成分の配合、免疫寛容の誘導についてご説明します。

・牛乳タンパク質の低分子化

タンパク質はアミノ酸が鎖状に結合した分子ですが、酵素分解により低分子化することでとくに即時型アレルギーに関与するB細胞の反応性の確立が低くなります。

従って理論的にはアミノ酸まで分解すればアレルギー反応がなくなることがありますが、低分子化するほど通常タンパク質分子内にあるアミノ基が生じてくるため風味が劣ってくるという問題点もあります。

・消化管機能の発達促進成分の配合

母乳調査で母乳を提供いただいた母親に対し、その児が5才時点でのアレルギー発症状況についてアンケート調査をした結果、アレルギー発症した児と、発症しなかった児が哺乳していた母乳中のリボ核酸とポリアミンにおいて、アレルギーを発症しなかった児が哺乳した母乳にはこれらの成分が有意に高いことが認められました。

また、乳児期ラットを用いたポリアミンの消化管細胞の発達に及ぼす影響について調べた結果、乳児期ラットをポリアミン投与と非投与群に分け観察しました。その結果、小腸絨毛組織を顕微鏡で観察したところ、ポリアミン非投与群では白く中身が抜け落ちた細胞が絨毛の表面に観察されました。この細胞は空胞細胞と呼ばれ、消化管が未熟な乳児期に多く成長に伴って消失することが知られています。一方ポリアミン投与群では、空胞細胞が消失し消化管機能が発達することが認められました。

従って、ポリアミンの摂取により空胞細胞が消失し消化管機能が発達することが認められました。

将来の粉ミルク

母乳および粉ミルクの目標は「母親が安心して育児ができ、乳児がすこやかに育つこと」と考えられます。

研究開発の課題では、とくに母乳と粉ミルクの差異である初乳組成、免疫、アレルギー、便性状、生活習慣病への影響などが挙げられます。

母乳には現在の科学では未だ解明できない成分や機能が数多く残されており、今後とも最新の技術を駆使して母乳研究を続けていく必要があります。