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理系パパの育児学

理系脳の育児学

授乳と抗うつ薬、安全に飲めるの?授乳間隔はどうしたらいい?などまとめ

妻が産後うつで薬を飲むことを薦められた。

産後の精神状態が安定しない妻がついに精神科を受診し、産後うつと診断されました。診断されたことについては、予想していた現実ですし、ここからどうやってリカバリーできるかが我が家最大の問題です。産後うつの治療は、休養と薬物療法と家族のサポートなので、精神科の先生が提案してくるべき方策も読めています。薬物療法

「うん、これが一番手っ取り早いし、効果あるよね。」

しかし、産後うつの治療はそこに立ちはだかるのは母乳の問題。母乳と薬物療法の両立。精神科の先生は、おそらく薬を飲んでほしい。しかし、最後の抵抗を見せる妻。ここでどっちに加担するか?これは家族にとって重要な問題です。しかし、僕は妻に早く良くなってほしい。早く良くなることが子供の幸せにつながる。究極のリスクアンドベネフィットの選択です。しかし、薬を妻に飲んでもらう説得をする以上、薬のメリット、デメリット、子供への影響、薬の代謝から計算した授乳スケジュールの提案など理系であるが故にできる提案があると思い授乳と抗うつ薬について調べたのでまとめておきます。

抗うつ薬の種類

抗うつ薬と言っても何種類もあり、効果、作用機序なども様々です。今回はその中で授乳中に使われる可能性があるものをピックアップしてまとめておきます。

SSRI

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(せんたくてきセロトニンさいとりこみそがいやく、英語: Selective Serotonin Reuptake Inhibitors, SSRI)とは、抗うつ薬の一種です。シナプスにおけるセロトニンの再吸収に作用することでうつ症状、病気としての不安の改善を目指す薬です。2009年5月現在、日本国内で100万人以上が使用していると推定されている。
旧来の三環系などと呼ばれる抗うつ薬は副作用があり、医者または患者によっては敬遠されていたことから、副作用を少なく・より選択的に作用することを目的として開発されました。肝毒性、心・血管副作用や、鎮静作用、口の渇き・便秘など抗コリン作用が原因と思われる副作用は減少しましたが、セロトニン症候群、賦活症候群、SSRI離脱症候群(中断症候群)など旧来の抗うつ剤ではあまり報告のなかった副作用が発生しています。
「選択的」とは他の神経伝達物質に比べ、セロトニンの再取り込み阻害作用のみでアセチルコリン等は阻害しないこと、ノルアドレナリンセロトニン及びドーパミンセロトニン比が大きいことを意味します。

参考 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 - Wikipedia

簡単にまとめますとSSRIは神経終末で選択的にセロトニンの再取り込みを阻害します。SSRIの特徴は「三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬に見られていた抗コリン作用がとても少ない」ということです。

処方されるSSRI

精神科などで処方されるSSRIにははフルボキサミンルボックスデプロメール)、パロキセチンパキシル)、セルトラリンジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)があります。

SNRI

セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(さいとりこみそがいやく、英語: Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors; SNRI)は、抗うつ薬の種類である。シナプスにおけるセロトニンノルアドレナリンの再吸収を阻害することで、これらの神経伝達物質の濃度を増加させる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がセロトニンのみの再吸収を阻害するのに対して、SNRIではさらにノルアドレナリンの再吸収を阻害することによって、興奮神経を刺激する。そのため、興奮に起因した不眠症のような副作用も生じやすい。
日本で販売されるミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシンの、精神障害での適応はうつ病である。いずれも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律における劇薬である。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 - Wikipedia

簡単にまとめますとSNRIは神経終末で選択的にセロトニンノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。そのため三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬SSRIよりも副作用が少なく、作用発現が速いのが特徴です。

処方されるSNRI

精神科などで処方されるSNRIにはトレドミンサインバルタ、イフェクサーがあります。

NaSSA

NaSSAは「Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant」の略で、日本語に訳すと「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬」になります。難しい名称ですが、セロトニンノルアドレナリンの分泌を促す作用を持ち、これによりセロトニンノルアドレナリンの濃度を増やす作用があります。

セロトニンノルアドレナリンは「モノアミン系」と呼ばれており、主に「感情」に関わる物質です。うつ病では、これらの物質が減ってしまう事で感情に異常を来たしていると考えられており、NaSSAはセロトニンノルアドレナリンを分泌させることで感情を正常化させます。

モノアミンにはセロトニンノルアドレナリンの他にドーパミンもあります。

それぞれの役割としては、

セロトニンは、落ち込みや不安といった感情に関係している
ノルアドレナリンは、意欲や気力といった感情に関係している
ドーパミンは、楽しみや快楽といった感情に関係している
と考えられています。

セロトニンが減ると落ち込みや不安が悪化し、ノルアドレナリンが減れば意欲や気力が低下し、ドーパミンが減れば楽しみや快楽を感じにくくなってしまうという事です(実際にはここまで単純ではありませんが、分かりやすく言えばこのようになります)。

モノアミンは神経の末端(神経終末)から分泌されます。そして分泌されたモノアミンは他の神経に作用することで、その情報がどんどん伝えられていきます。NaSSAは神経終末のモノアミンの分泌を促す作用があります。すると次の神経へ正しい感情の情報を伝えやすくなるため、気分の改善が得られるというわけです。

簡単にまとめますとNaSSAは5-HT2受容体と5-HT3受容体を選択的に阻害するため、5-HT1受容体のみが作用増強します。そのためにSSRISNRIよりも作用発現が短く、抗うつ作用が早く出てきます。

 参考 NaSSAとはどのような抗うつ剤なのか。NaSSAの効果と副作用

処方されるNaSSA

精神科で処方されるNaSSAにはミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)があります。

妊娠と薬の情報センターには記載なし

授乳のバイブル妊娠と薬の情報センターには抗うつ薬についてはリストの記載がありません。しかし、医学文献を検索すると母乳移行性は低い薬剤などの情報があります。

妊娠と薬情報センター:授乳中の薬の影響 | 国立成育医療研究センター

母乳からの薬剤暴露に関するパラメータと薬物動態データまとめ

母乳と抗うつ剤の情報を表にしてまとめておきます。

  RID(%) M/P比 最高血中濃度到達時間(時間) 半減期(時間)

パロキセチン

パキシル

1.2-2.8 0.056-1.3 6.5(20mg) 14.4(20mg錠)

セルトラリン

ジェイゾロフト

0.4-2.2 0.89 8.7(50mg) 22.5(50㎎錠)

フルボキサミン

デプロメール

0.3-1.4 1.34 4.7(50mg) 9.8(50㎎錠)

エスシタロプラム

(レクサプロ)

5.2-7.9 2.2 10.8(EM)
12.9(PM)(10㎎錠)
28(EM)
51(PM)(10㎎錠)

ミルナシプラン

トレドミン

データなし データなし 2.6(50mg) 8.2(50㎎錠)

デュロキセチン

サインバルタ

0.1-1.1 0.267-1.29 6.9(40mg) 10.6(40㎎カプセル)

ミルタザピン

リフレックス

1.6-6.3 0.76 1.1(15mg) 32(15㎎錠)

用語解説

RID

乳児薬物摂取量(mg/kg/day) / 母親の薬物摂取量(mg/kg/day)×100
母体投与量の何%が乳児に移行したかを示す
RIDが10%以下であれば安全。1%以下ではまず問題にならないとされています。

つまり、SSRIでは最大でも2%しか赤ちゃんに移行しないということで、ほぼ安全に使用できそうです。

MP比

母乳中薬剤濃度 / 母体血中薬剤濃度

ママさんの血液と母乳の濃度の比較です。M/P比が高値でも母体血中濃度が低い場合、母乳移行量も少なくなり問題としなくてもいいこともあります。

まとめ

各薬剤の母乳からの薬剤曝露に関するパラメータと動態データを乳汁から摂取する量はかなり少ないと予想されます。半減期の長い薬剤を毎日服用する場合には、血中濃度の日内変動は大きくないので、服薬後時間をおいて授乳をする必要はとくにないとされています。今回、子供への影響は気になりますが、妻の体調が今は気になります。現在の処方だと時間などは考える必要はなく、少し母乳を減らしながら薬を飲んでいくが最適解なのかなと個人的には思いました。