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カレーだけ?離乳食は大丈夫?ウェルシュ菌について

離乳食を1週間分ストックされているというママさんは少なくありません。先日、カレーの食中毒でウェルシュ菌に注意というニュースが流れてきて、離乳食のストックとか大丈夫なの?と思ったのでウェルシュ菌について今回は勉強しました。

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ウェルシュ菌とは?

ウェルシュ菌(Clostridium welchi、Bacillus welchii)は、米国の病理学者William皿WelchとGeorge H.F.Nuttalの共同研究により、1892年にガス壊疽の原因菌として発見された細菌です。
ウェルシュ菌という名前はこのWelchにちなんで命名されたものです。現在の正式な学名はクロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridiblm Perfringens)と呼ばれています。

ウェルシュ菌は長さ3~9μm、幅0.9~1.3μmの偏性嫌気性グラム陽性桿菌といわれる菌です。実はヒトや動物の腸内常在菌で私たちの腸の中にもウェルシュ菌はいます。他にも下水、河川、海耕地などの土壌にも広く存在します。

常在菌のウェルシュ菌がなぜ食中毒を起こすのか?

腸管内常在菌であるはずのウェルシュ菌が食中毒を起こすことについては長年分かっていませんでした。1953年に英国のBetty.C.Hobbsらがロンドンで発生した食中毒事件で検出された菌株の解析により、易熱性(熱に弱い)の常在ウェルシュ菌とは異なる耐熱性のウェルシュ菌が食中毒を起こすことを証明しました。さらに1970年代には、腸管毒素(エンテロトキシン)であるClostridium Perfringens enterotoxin(CPE)が、ウェルシュ菌食中毒の病原因子であることが明らかなりました。

加熱に弱いエンテロトキシン

このエンテロトキシンは熱や酸に弱く60℃・10分間の加熱やpH4以下の酸性環境で失活します。

ウェルシュ菌は熱に強い

ウェルシュ菌は、高温や低栄養などの厳しい環境では芽胞を形成して休眠状態となります。
私たちの腸管にいるウェルシュ菌の芽胞は易熱性であり100℃なら10分以内で死滅します。しかし、食中毒の原因となるウェルシュ菌は耐熱性の芽胞を形成するため、100℃で4時間以上加熱しても生き残るとされています。

ウェルシュ菌の症状

汚染された食品を食べた後,6~18時間(平均10時間)で発症するとされています。食べてから24時間以上経過して発症することはまれとされています。
主な症状は水様の下痢と腹痛です。

嘔吐や発熱はあまり見られないようです。

エンテロトキシン(CPE)が腸管上皮細胞膜にイオン透過性の小孔を形成し、細胞形態や細胞膜のイオン輸送機能を破壊することで腸管内への水分および電解質の漏出を起こし下痢や腹痛の原因となります。

ウェルシュ菌に食肉は汚染されている

食肉は購入時すでにウェルシュ菌に汚染されている可能性が高く、日本で売られている
食肉の71%からウェルシュ菌が検出されたという報告もあります。特に鶏肉、ひき肉は汚染率が高い(80%以上)です。

ウェルシュ菌食中毒の主な原因食品

ウェルシュ菌食中毒の主な原因食品はカレー、スープ、肉団子、チャーシュー、(肉の入った)野菜の煮物などで、米国ではローストビーフやハム、鶏肉料理による食中毒事例があります。

なぜ食肉が原因になるの?

食肉にはグルタチオンなど還元物質が多く含まれるため、食品内部が嫌気状態になりやすいためと考えられています販売されている食肉の一部は購入時すでに食中毒の原因となる耐熱性のウェルシュ菌に汚染されていますが,加熱調理されると熱に弱いほかの細菌が死滅してしまうため競争相手がいなくなります。さらに熱によって肉内部の酸素が追い出されることで、偏性嫌気性のウェルシュ菌にとってはますます増殖しやすい環境となります。

食品の温度が下がっていく過程でウェルシュ菌は、至適増殖温度である43~47℃付近になると芽胞菌から栄養型となってさかんに増殖をくり返します。そして、食品が提供される前の再加熱が不十分だと栄養型のウェルシュ菌がほとんど死滅しないため、その食品を食べたヒトは一度に大量の生きた菌を摂取することになり、かなりの数が胃酸による不活化を逃れて生きたまま小腸に達するために食中毒になるとされています。

ウェルシュ菌感染防止の方法

  1. 低温で保管するときには5℃以下に保つ.
    室温でゆっくりと冷却するとウェルシュ菌の至適増殖温度(43~47℃)に長時間留まることになるため、小分けして急速に(3時間以内に20℃以下まで)冷却することが大切です。さらに小分けにすることで酸素に触れやすくなり,偏性嫌気性菌であるウェルシュ菌の増殖が抑えられます。
  2. 高温で保管するときには60℃以上に保つ.
    ウェルシュ菌は芽胞の状態では60℃でも死ぬことはありませんが、増殖もあまりしません。しかし、55℃以下に下がると芽胞菌は発芽し、急速に「増える」ため、しっかり 60℃以上を保って芽胞の状態に留めておくことが重要です。
  3. 再加熱するときには中心部が75℃以上になるまで,よくかき混ぜながら温める.
    液状の食品では十分にかき混ぜることによって中心部にまで十分に熱を伝えるとともに,酸素に触れさせて少しでも内部を好気状態に近づけることで栄養型ウェルシュ菌を「やっつける」ことがポイントである.固型食品でも中心部まで十分に温度が上がるようにしっかりと加熱する.
  4. 生の食品を扱う包丁,まな板,容器などを調理済みの食品を扱うものと別のものにする.
    同じものを使う場合には,よく洗って消毒をする.
  5. 食品を扱う前にはしっかりと手を洗う.
    ウェルシュ菌は芽胞の状態ではアルコール消毒が無効なため,流水と石けんでしっかりと手洗いを行うことが重要である.

まとめ

離乳食で肉系に挑戦するときは出来立てを食べさせることに気を付ければ、問題はなさそうです。

参考文献

各病原体の特徴 ウェルシュ菌 臨床栄養 2015.11